SelfLinerNotes
"息吹" 全曲解説です。
曲にまつわるエピソードや裏話を曲製作者の目線で解説します。
"タネ明かし" となるエピソードもありますので、それでも構わないという方だけお読みになることを強くお勧めします。
Disc 1
01. Breath Of Green
製作:1998 /収録:2004
- つづきを読む
僕がはじめて、いわゆる「歌もの」をつくったのは、1998年のことです。たしか季節は秋頃でしたので、息吹発売から8年ほど前のことになります。 その機会に、ある程度まとめて曲が出来たので、アルバムの様にまとめてみようということになって、「その1曲目の為の曲」としてつくった曲がこの「Breath Of Green」です。
最近では傾向が薄まってきたとは思いますが、とにかくこの当時日本の歌謡曲といったら、多少の差こそあれ「Intro → A → B → C → A → B → C →間奏 → D → C → C → Finish」と進行するものがほとんどでした。「定型」を用いることによって、ある程度の完成度の高さが自ずと保障されるため、つくり手によって安易に選択されつづけてきた「保険」のひとつだったのです。僕自身の曲も例に漏れず定型を外していませんでしたが、例え歌謡曲であってもそういう「定型」に縛られずに構成することも可能なのではないか、と挑戦をしてみました。つまり「A → B → C → D → E → F ・・・」という構成を取れるのではないかと。 しかし、ただ闇雲にフレーズを増やしていっても意味を持たせることが難しくなってしまうので、文章の構成で馴染みのある「起承転結」を適用してみました。歌詞が、ではなく、音のフレーズを構成するうえでの「起承転結」を目指したのですが、当時はそこそこの手ごたえを得ることが出来たと思っていました。 その後も、このような構成の曲をかなりつくったような記憶がありますが、形として残っているものは皆無です。この曲より完成度の高いものもいくつか出来ましたが、結局この曲の持ったエネルギーを再び表現できる(あるいは超える)ものは完成しませんでした。そして8年経った今、その挑戦の唯一の生き残りであるこの曲を、ここで今作の1曲目として、改めて選曲したのです。 歌詞には特に意味を持たせていないのですが、アプローチとしては、なぜだか「ストライド」という言葉をどうしても使いたくて、そこからつくっていったという記憶がありますね。
02. 今までもそして今日も流れゆくメロディ
製作:2001 /収録:2005
- つづきを読む
通常、僕が曲を作る場合のプロセスには2通りしかありません。
1) サビの発想を起点にして、そこに至る過程を発想する
2) イントロの発想を起点にして、サビへ向けて発想していく
いずれのパターンにも共通して言えるのは、発想によって導かれた答えはひとつしかないということです。作りこむ過程で、いくつかの発想から取捨選択するということはありますが、最終的には「こうあるべき」という形に落ち着くものです。しかし、この曲の場合は少し特殊で、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、大サビといった曲を構成する要素に様々なパターンが出来てしまい、ひとつの形に絞れなかったので、「現時点で最良」と思える構成を組み合わせながら製作しました。 実は、Laguna間では通常この曲のことを2001年来、「パースペクティブ」と呼んでいます。今回息吹に収録したのはその「パースペクティブ」の1パターンで、度々構成を変えながら録音を繰り返してきたので、他にも完成していたいくつかのバリエーションが存在しています。 今回の完成形には「パースペクティブ」というタイトルがそぐわなかったので、都留さんと相談の上、歌詞の中からそのまま採って「今までもそして今日も・・」という長いタイトルの誕生となった訳です。
03. 息吹
製作:2004 /収録:2005
- つづきを読む
「息吹4部作」の第3章となる曲です。
(※「息吹」は、アルバム「私という名の小さな光」で 7部作となりました。)
「息吹4部作」は「花(「風立つ道」に収録)」「小さな翼」「息吹」「ねがい」で構成されています。 「ひまわり3部作」で用いた、曲と曲との間に空白の時間を与えることで物語を語ってゆくという手法と、 「BreathOfGreen」時代に志向した、起承転結を歌謡曲で表現するという試みを同時に行ったもので、 この「息吹」は役割で言うと「転」の部分を担っていることになります。
場面は「小さな翼」の翌日以降。突然帰って来た「小さな翼」の主人公の女性が、再び東京へと戻る直前の様子を、 その友人である女性の視点から語るという内容になっています。この曲中で「あなた」と言われている「小さな翼」の主人公との間の、友人同士(あるいはかつて友人であったもの同士)のやりとりを通し、人物の等身大の姿を描いています。博愛的な内容を描くよりもむしろ、このように大きな視点から見れば些細なことかもしれないが当事者にとっては大いに劇的である、という出来事を描いてこそ、「4部作」という形式で表現するということに意義が与えられるのではと考えました。
この連作は「変わってしまうもの、変わらないでいるもの」に対して抱く想いを心情的主題としています。
僕は割と保守的な人間で、「変わってしまうもの」に少なからぬ恐れを感じます。今まで「あった」ものが「なくなる」ということに、恐怖とまでは言いませんが、とても強い寂しさ、あるいは抵抗を感じます。しかしながら、物事を前に進めていく為には、必ず何かを「変える」必要があり、人間とはそうすることで生きている、そうしなければ生きていけない存在であると言って良いでしょう。
ですから「変わってしまう」ことを知りながら、自らを「変えていく」強さをもった存在を、僕は尊敬します。と同時に、そういう世界の中においても変わらないでありつづける存在(物や、気持ち)に対しても、敬意を払って生きて行きたいと思っているのです。
そしてまた、「変わりたい」と願いながらも「変われない」でいるもの、その「変わること」の難しさ、そういったものの存在を知っているつもりでもあります。「息吹4部作」には、これらすべての思いを託しました。
もうひとつ、この連作の重要な技術的主題は、解釈の自由を生み出すというものです。象徴的な場面として、「そんな風になんでもないことをあたりまえのように話せるくらい変わってない そう思った」という場面があります。一方はまさしく「そう思った」のですが、真実は「小さな翼」の主人公は自分自身を「自分がいったい誰なのかもわからない」ほど変わってしまったと思っているのです。ここで考えられる解釈として(以下「小さな翼」の主人公を「(小)」、「息吹」の主人公を「(息)」と表記します。)、
1)(小)は本当に変わってしまったが、(息)自身も変化をしているので、相対的に(小)が変わっていないように見える
2)(小)は変わってしまったことを自覚できているため、(息)の前では変わっていないよう振る舞っている
3)(小)が変わってしまったことは明らかだが、(息)にとってのみは変わっていないと感じられる
4)(小)が自分自身が変わってしまったのだと思い込んでいるだけで、本当は何も変わっていない
のような状況が挙げられるかと思います。ただしこれはあくまでも一例ですし、ここに正解があるわけでもないのです。
同じように、「ただひたむきに強く生きているあなたを見て・・・」という場面も、 (息)からそのように見えているだけにすぎないのかもしれないが、実際にどうであったかは別として、再会してからの (小)の振る舞いが(息)に対して、「自分はこの場所(故郷)で頑張らなければ」という考えに至らせる勇気を与えた、ということは事実なのです。
このように人と人との関係というものは、たとえ正解が存在したとしても当人同士がそれを知ることは決してなく、自分が思っている事と相手が思っている事とは常にすれ違っているものだと思うのです。
「歌」は、ひとつの視点から情景を描くことしか出来ないその性質故に「主観」の立場から物語を傍観することしかできませんでした。しかし、このように複数の視点からひとつの情景を描くことによって新たに「客観」的な視点(即ち聴き手自身の「主観」)が加わり、より深く物語に感情移入することができるのではないかと考えています。
最後に。
ここであらためて「耳を澄まして」この歌を聴いて頂ける事を願っています。そして物語は最終章「ねがい」へと、その言葉を託します。
04. Running Beauty
製作:2004 /収録:2004
- つづきを読む
着想の時点から録音完了まで、ほかの事は一切やらずに1週間くらいで一気に仕上げた曲です。アルバム「風立つ道」に「ワンダフルライフ!」という曲がありまして、同じような存在の新しいアルバム用の曲というコンセプトで製作しました。 この時期は後藤冬樹さん達とカフェライブを何度かやったりして、今まで全く使ったことの無いコードの使い方を色々と勉強させてもらったので早速とりいれてみたのですが、これが意外にはまって、サビのうしろ等はボサノバ調になっています。これをきっかけに結構 Major7th のコードを使うようになりましたね。
タイトルは(お分かりだとは思いますが)「Sleeping Beauty」をもじりました。日本語に上手に訳するのは難しいですね。一気に作りましたので、それほど詞に力がない曲ですが、「確かなことは ひとつだけ そう永遠も、一瞬も、変わらない」というフレーズだけは結構お気に入りです。
05. ひぐらし日記
製作:2004 /収録:2004
- つづきを読む
ひまわり3部作の第2部、「ひぐらし日記」です。
「ひぐらし日記」は、ラグナ唯一の男性視点で語る歌詞の内容ですので、不思議に思われた方もいると思います。今作(息吹)でのテーマのひとつは、ある物語に、視点を変えた「別の見方」を増やしていくことで物語に幅を出す、という手法を歌謡曲で試みるということでした。
「あとがき」にも書いたので繰り返しになりますが、物語とは「多面的な」ものであるはずだと僕は思っていて、僕のフィールドである歌謡曲の世界にそれを持ち込めないかと考えていました。 そして、まずはちいさな領域の表現からスタートしようと実験的に製作したのが、この「ひまわり」を軸とする物語なのです。
「ひまわり」とは、前作「風立つ道」に収録されている曲ですが、この「ひぐらし日記」では、その「ひまわり」の「以前〜直前」の出来事を、「もう一方の当事者の視点」で語っています。 どうでしょうか?「ひまわり」という単独の視点しか持たない物語に、「ひぐらし日記」というもうひとつの視点が加わっただけで、とても世界が広がったように思えないでしょうか? この物語には、女性ひとりと男性ひとりという2人の人物が登場しますが、それぞれの視点からもう一方の人物について語るということが、お互いの個人性を補完し合うこととなり、その姿がよりはっきりと浮き出てくるような効果を生むのだと思います。
もうひとつのポイントは、既に発表していた曲の「以後」ではなく、「以前」を描いたところにあります。ドラマ、小説などではごく当たり前の手法ですが、何故か歌謡曲の世界で一般的に用いられることはないようです。「以後」で幅が出るのと同質ではない、独特の感慨を伴った広がり方を与えてくれるものだと思っています。
歌詞は恥ずかしい程のいわゆる「ベタ」で通しました。個人的にですが、僕はひぐらしの鳴く声が非常に好きなので、この単語を好んで使っています。語音が「日暮し」という言葉に通ずるところも好きです。前作では「青い嵐」という曲中で使いましたね。
06. ふたり
製作:2005 /収録:2005
- つづきを読む
この歌はただ「今」の言葉を歌うための歌ではありません。十年後、二十年後に、かつて「今」であった時間を回想し、未来の言葉を語るという構成になっています。 実は、依頼があって結婚式で歌われることを想定して書きましたので、このような構成になっています。結婚式でよく歌われる歌というのは、「今」の気持ちを言葉にしたものが多いのではないかと思っていましたので、その「今」の部分を極力出さず過去に対する言葉と、未来に対する言葉で繋ぐよう留意して書きました。それによって、その言葉を発しているのは紛れも無く「今」の存在であるということが、かえって浮きたつような効果が得られたのではないでしょうか。
07. Dawn of day
製作:1998 /収録:2004
- つづきを読む
98年に「Breath Of Green」の派生形として製作した曲です。Breath Of Green のサビ裏のフレーズをモチーフに、また別のメロディーを載せて異なるサビを作りました。もう少しお互いの曲間に相関性があればどちらもより活きたのでしょうが、最終的にはそれぞれが独立した存在になってしまったのがやや心残りです。比較的古いというか、洗練されていない印象の強い曲なので、再録し息吹に収録することを迷いました。
2回目のサビの後の「細く小さな流れの・・・」の部分では、異なるメロディーを重ねて同時に歌うということを試みています。製作当時はこれは面白いと思い、今でもそう思っていますが、歌詞でなにかやろうと思っている曲では使えない手法ですので、残念ながら近作で用いる余地はありませんでしたね。 中
08. コスモス
製作:1998 /収録:2005
- つづきを読む
「息吹」に収録した曲の中で、最も古いものがこの「コスモス」です。1998年に初回の録音をしましたので、日の目を見るまでに8年掛かってしまいました。歌ものの曲を作ること自体はじめての経験で、「作れるのか試してみよう」という状態であった当時の作ですので、変に考えすぎていませんね。というより全く考えていないんでしょう。「思うままに一気に書いた」という成り立ちが他の曲には無い独特の雰囲気を持つに至った最大の理由かと思います。
「コスモス」というタイトルの歌ですが、僕自身は不思議と映像的にコスモスの花の様子を意識したことがありません。むしろ「川」とか「煙突」など、それ以外のキャラクターに存在感を感じていて、特に「電車」という単語には、登場するだけで、ブレーキの軋む音であるとか、匂いであるとか、駅やホームや行き交う人(あるいは誰もいない駅やホーム)であるとか、そういった日常の世界を「歌」の世界から「自分」のレベルの世界にまるごと持ってきてくれるという特別な感覚があって、この歌の中で非常に重要な役割を果たしていると思っています。話が少し逸れてしまいますが、同じ理由から、息吹4部作(「小さな翼」「息吹」「ねがい」)のそれぞれの歌の間を行き来する手段として、あるいは「ひぐらし日記」、「それから」でも重要なキーワードとして用いました。
これも余談ですが、僕の中では結構しっかりとした設定ができていたりします。「川」はかなりの幅があって、電車の通る橋が架かっている大きな川で、「煙突」は工業地帯でよく見るような朱色と白の幅広の横縞の、「あの煙突」です。(こういう映像イメージも、おそらくは聴き手の数だけ存在しているのでしょうね。)
音楽的な話をします。この曲の製作当時はインストの音楽ユニット(?)をやっていました。その相方のune くんにこの曲を聴いてもらったところ「レゲエですね?」と言われたことをよく覚えています。自分では気付いていなかったのですが、言われてみればクリーンギターのカッティングで裏に入れ続ける感じは正にレゲエのそれで、今で言う「Lagunaっぽさ」と「レゲエ風」のミクスチュアがよく成立したなと今更ながらに思います。 全てが懐かしいですが今でも瑞々しい、とても思い入れの深い曲です。
09. 頬杖
製作:2000 /収録:2003
- つづきを読む
極力シンプルな構成になるように、曲の頭から軸となる Am > Bm > Em という3コードのフレーズを繰り返すことにこだわって製作しました。かなり初期の作で、この時期このような「暗い」雰囲気の曲を好んで作っていましたが、あまりやらなくなってしまいましたね。今の感覚で取り組めばもっと完成度を上げられると思いますので、また挑戦してみても面白いかと思っています。
残念ながら最終的にはマッチしなかったために使用しませんでしたが、音源に静かに降る雨音のとても良い音色があって、それを使いたいが為にこのような歌詞にしました。
10. 風立つ道 (Sopla al alba)
製作:2006 /収録:2006
- つづきを読む
前作のタイトル曲をボサノバ歌謡風にアレンジしてみました。このように大胆なアレンジをせず、2004年にカフェでやっていたアコースティックアレンジ、あるいはギターを再録して「Ver.2」のようなものを収録する構想はあったのですが、2005年の年末に突然思いついて「これだ」と思い、翌正月三が日で一気に仕上げました。何度かライブでご一緒したことのあるOverjiさんの影響が色濃いですね。一度はこのようなフルートを使いたいと思っていましたし、作風の幅が広がるきっかけとなったため、個人的には非常に気に入っています。
アコギ部分だけでも一人で演奏するのは不可能ですので難しいとは思いますが、屋内の会場であればであれば是非ライブでもやりたい曲のひとつですね。
ちなみにサブタイトルの Sopla al alba (ソプラアラルバ)とは、「夜明けに吹く」といった意味です。そのような感じではないでしょうか。
11. Lovers:011
製作:2002 /収録:2002
- つづきを読む
Laguna らしくないというべきか、他にはない独自の雰囲気を持った曲です。とかく大袈裟になりがちな「本格ドラマティックJ-POP」の中の、休憩時間といったような扱いですね。 実はバスドラ(つまりリズム)から作り始めて、最初から最後までそれを崩さないという縛りを設けて製作した、という得意な経緯を持つ曲です。国際電話をモチーフにした設定は、もちろん後付けになります(思いついてから30分くらいで書き切ったような気がします・・)。
前作「風立つ道」を持っている方はお分かりかと思いますが、これは都留さんの「以前の」歌い方で録音した最後の曲です。「風立つ道」以降はすべて「今の」歌い方にしてもらっているので、今作の中では唯一のこの歌い方である点も、独自の雰囲気を持つに至った理由の一つでしょう。
12. mother
製作:1998 /収録:2005
- つづきを読む
コスモスと同時期に製作した、最も初期の作のひとつです。アレンジを行った数バージョンが存在するのですが、この曲に関しては色々と趣向を凝らすよりもストレートに表現した方が良さ(らしさ)が出るのではと思い、ほぼ最初に製作した時の状態に戻し、再録しました。最初から最後まで4拍子を刻み続けるいかにも90年代的な構成の曲で、今聴くとかえって新鮮な感じも受けますね。
何故かあまりこの曲についての感想を伺ったことがありませんが、サビのメロディは個人的にはかなり気に入っていて、なかなかこのサビを超えることが出来ないなと思っています。
13. 流星群
製作:2005 /収録:2005
- つづきを読む
意図的にではなかったのですが、結果的に「息吹」収録曲のいくつかから繋がる可能性を持つことになった作品です。「ふたり」、「ひまわり3部作」、「頬杖」や「Lovers:011」等・・・ どの話の後日談としても破綻しませんし、あるいは、それら全てが同一時間軸の延長線上のものと考えても良いでしょう。 ただしその中でもひとつだけ、「事実」として設定しているのは、この歌が 「ねがい」の同日同時刻の比較的近い地点で起きた物語であるという事です。位置関係が並列になるよう、それぞれのディスクの最後に収録しました。
このひとつの歌の中には、「凍えるような寒い夜に起きた流星群」という特別な出来事を共有した、「二人」の人間の姿が描かれています。「ねがい」側のこの場面に至るまでの過程はじっくりと描かれていますが、こちらではあまり触れられていません。
しかし、それまでにそれぞれの体験した出来事が全く関係の無いものだとしても、それらは紛れも無く同じ空の下、同じ地平の上で同時に生きている人間の中で起きている(起こっていた)ものなのです。この曲を存在させることによって、「ひまわり3部作」「息吹4部作」のような「縦」関係の複数視点の繋がりに加え、「横」の複数視点による広がりを持たせました。すなわち「流星群」は、このアルバムのコンセプトを端的に説明できる最も重要な曲であると言えます。物語とは「多面的な」ものであるはずだ、という考えをお分かり頂けたでしょうか。
話は逸れますが、同じように現実においても、このように様々な出来事が人間の数だけ同時に存在していることを考えると、世界や人間の不思議さを考えずにはいられません。
曲について。唯一のピアノのみの構成となっています。本来は「風立つ道」収録曲、「青い嵐」のイメージで、現状のものにアコギとストリングスを加えるつもりで製作していたのですが、都留さんの希望によりピアノ以外のアレンジを加えませんでした。結果的に大袈裟なものにならずに素朴な味わいを持った作品となりました。
Disc 2
01. 手紙
製作:2001 /収録:2004
- つづきを読む
この曲もDisc1 の「Breath Of Green」と同じく、アルバムの1曲目を意識して製作した曲です。意図的にではないですが、結果的に「Breath Of Green」の頃に目指した「起承転結」の形になっています。
あまり音づくりに対して凝ったことをしない方なのですが(しない、というよりそういう作業が単に苦手・・・)、この曲に限っては、短い上にメロディの起伏が少ないこともあり、遊びの音を入れたりすることで薄くならないように結構こだわりました。
YAMAHAのRm1x という機械でリズムトラックと効果音を作ってWavで出して、普段使いのシーケンスソフトでミックスして再度録音、という通常より手番が多く必要になりましたが、広がり、厚みなどの音感は他の曲にはない独特の雰囲気に仕上がったかなと思っています。
02. one
製作:2000 /収録:2004
- つづきを読む
製作当時はまだLaguna は存在していませんでしたので矛盾した言い様になってしまいますが、Laguna の方向性を決定付けた曲だと思っています。Laguna のというより自分の、と言ったほうが正しいかもしれませんが。
98年にコスモスやmother を作って以来、また歌ものから遠ざかっていたので、「歌もの、この1曲」を目指して製作しました。 出来るだけ単純なメロディーを目指した結果「いかにもありがち」といった感じの出来上がりになった訳ですが、まだ自分になにが出来るのかも分かっていない状態でしたので、この「いかにもありがち」を仕上げたことで「歌ものでやっていこう」と思えるようになり、「歌 + ギター」という現在のスタイルに至りました。
バッキングのギターはマーシャル三段積みのアンプシミュレータで出してみました。弾いてみると楽しいので、ギターをお持ちの方はコピーするのにお勧めです。
あらゆる意味で、今現在あるほとんどの曲の「原点」といえる存在ですね。
03. 向かい風
製作:1999 /収録:2005
- つづきを読む
「one」と共に、自分の作る曲の方向性を強く決定付けた重要な作品の1つです。2003年の「風立つ道」発売時に、都留さんが「本格ドラマティックJ-POP」という肩書きを考えてくれたのですが、そこから遡れば「向かい風」がその元祖ということになるでしょう。収録したものは、オリジナルに一度アレンジを加えたものに、2004年のカフェライブ用のアレンジも反映した版になります。A→B→サビ へとメロディの進行が「必然的」である感じられるように、「流れ」を意識して製作しました。
別々に出来たブロックを組み合わせて一曲にするという手法もありますが、やはり納得の出来るメロディーを作りたいものです。
04. 小さな翼
製作:2005 /収録:2005
- つづきを読む
「息吹4部作」の第2章にあたり、「息吹」という物語を本来の主人公である女性の視点で描いた作品で、前作「風立つ道」の収録曲 「花」から数ヶ月、さらに 4年と2ヶ月と少し、という設定です。
「息吹」とは再生の物語である、と思っているのですが、その前段階である挫折と停滞の過程を、本来追求している理想ではなく、まずは対面する現実を優先して生きて行かざるを得なかった、という状況を通して描いています。
この場合における理想とは「絵を描く」という事ですが、実際はその理想に対して他の何をも差し置いて没頭し、努力し続けることの出来る人間というものは 稀な存在ではないかと僕は思っています。しかし、大抵の歌や物語はその「稀」な方の人間を主役に据えることが多いような気がしてなりません。
そのような人間たれ、と格好良く言う事はいくらでも出来るのですが、正直に言えば作者である僕自身がその「稀」な方の人間ではありませんので、 この物語に登場する「普通の人間」の気持ちに大いに共感することができますし、同じように共感されるという方も多いのではないでしょうか。
このような経験を経由して得た結果は、一心不乱に努力し成し得た結果ほど美しくはないのかもしれませんが、同じように価値あるものであるはずだと思っています。
曲の製作にあたっては、「強がりを言っている風でありながら、内実とても悲しい」ということがポイントなので、内容と対照的な明るいリズムに、ブロックごとに明暗のはっきりした旋律をのせることで表現しました。中盤、「胸を突く言葉を〜」という部分のメロディーと、ギターソロのメロディーのどちらを大サビのメロディーにまたはギターソロにするかということをしばらく迷いました。 実際には前者を大サビとして採用した訳ですが、もし逆であったらこの中盤の雰囲気はまた違ったものになっていたかもしれません。
「コスモス」のLinerNotes で書いたとおり「小さな翼」→「息吹」→「願い」と、曲間の移動に電車という道具を使うところがこだわりでもあります。
そして物語は「再生」へ向けて、「息吹」へと繋がります。
05. 蜃気楼
製作:2003 /収録:2003
- つづきを読む
収録曲中唯一となる 6/8拍子です。あまり目立つ存在ではないかもしれませんが、自分としては十分に納得が出来ていて、かつ非常に好きな作品です。やはり作風を模索している時期に製作したものですが、独特の雰囲気と綺麗な空気感が出せたようで、不思議に思います。どの曲を製作する過程においても出来るだけ隙のない構成を理想としていますが、そういう意味で(ややAメロが長めではありますが)個人的に完成度の高い作品といったら、「今までも〜」かやはりこの曲を挙げたいと思います。聴かれる人によって感じ方は色々だと思いますが、意外にも当人はこういう風に考えていたりする、という一例かもしれません。
2010.9.5 加筆
とても大事なこと書き忘れていました。この曲の途中で夕立が降る場面があるのですが、これは「ひまわり」(「風立つ道」収録)で降った激しい雨(つまり「ひぐらし日記」のやや後)と同じ雨という設定で、これらは同日、同時刻の近い地域で起きていた二つのドラマという関係にあります。
これは「流星群」-「ねがい」で用いた「横」の複数視点による広がりという考え方と同じものですが、こちらが元祖です。「息吹」や「ひぐらし日記」のような「縦」への連作も、すべての発端はこの「蜃気楼」と「ひまわり」の「雨が同じ」もの、というアイディアを原点とし、産まれたのです。
06. The Diver
製作:2002 /収録:2002
- つづきを読む
2000年までの間に10曲あまり製作したことによって、自分に出来ること、出来ないことというものが次第に分かってきたので、色々と新しい作風に挑戦してみた、という時期の作品です。「向かい風」で書いた、「納得の出来るメロディー」には到達していないという印象は否めませんが、このような曲調においても、Bメロ〜サビではなんとか自分らしさを出せたのではないかと思います。自分はイントロ下手だと自覚しているのですが、そんな中でもこの曲のイントロはお気に入りです。残念ながら、そこからAメロへの流れが上手く作れなかったのですが。
07. サヨナラ
製作:2003 /収録:2003
- つづきを読む
ピアノのイントロをきっかけとして出来たので、クリスマスソングのような楽しい曲にするつもりだったのですが、出来上がってみればいつものように悲しい歌(内容はポジティブですが)になってしまいました。曲そのものはポイントなる数箇所以外はメジャー進行で楽しい雰囲気になっているので、その内容とのギャップが、かえって良い効果を生んだかもしれません。
このような、1,2,1,2、というシンプルで淡々としたリズムの曲はあまり作りませんので、そういった意味では貴重な作です。2004年のカフェライブではアコースティックアレンジが非常に良くはまり、レギュラーとして活躍しました。
08. memories
製作:1998 /収録:2001
- つづきを読む
これもサヨナラと同時期、98年に初めて製作した作品の1つで、 2001年にアレンジ、再録し、当初のものとはかなり違った形になったものです。 実を言うと、僕は今回の「息吹」に収録するつもりは全くなかったのですが、都留さんの要望で 収録することとなりました。個人的には、色々と模索していた時期の作だけに、様々な意味で「迷い」が伝わってくる曲 であると思えます。その迷いもポジティブに捉え方をすれば、他には無い雰囲気とも言うことも出来るのでしょうか。
09. Never let me go
製作:2002 /収録:2002
- つづきを読む
「息吹」収録曲の中で最もLaguna らしくない曲といって良いかもしれません。この時期に購入したシンセを使うために製作しました。繰り返し無し1コーラスのみの曲ですが、「Breath Of Green」のように起承転結を意識した訳ではなく、実は普通に続きが存在します。暫定的に1コーラスまでで録音し、しばらく置いておいたのですが、後に現在の状態以上に発展させる必要性を感じなかったのでこれで完成としました。 あまり意識していなかったのですが、このように実験的であったり、曲先行であまり内容を問わない場合の歌詞には英語を使ってしまう傾向があるようですね。逆に内容を重視する場合には、絶対に日本語だけで書くように決めています。
10. Chase a Dream !
製作:2002 /収録:2002
- つづきを読む
1998年に友人とインストゥルメンタルの音楽ユニットのようなものをやっていて、その時に製作した「OFF LIMIT」という曲が下敷きになっています。伴奏には、メロディーには全く影響を与えず無駄なようだが効果的な音、という要素が重要なのですが、僕はその要素を入れる作業が非常に苦手です。苦手ながらもなんとかやってみたのが、このフェードインで徐々に音色を重ねていくイントロです。やはり苦手であることがとよく分かった為、以降の作ではこういう効果は狙わないようしました。反対に間奏でのリズムトラックの展開と流れるような感じは格好良く作れたかと思います。性格なのでしょうか、こういうポジティブな内容の歌詞を書こうとすると微妙にぎこちない雰囲気になってしまいますね…。
11. はじまりの歌
製作:2006 /収録:2006
- つづきを読む
息吹に収録した曲の中で、最も新しい作になります。元々全く構想にありませんでしたし、思いついたときには 息吹の予定も大分進んでいたので、仕上げて録音まで行うべきか悩みました。 特定のモチーフは存在しないのですが、空気が冷たい澄んだ青空、夜空のピュアなイメージで書きました。 夏の歌(ひまわり3部作等)もありますが、自分は冬の歌(息吹4部作等)の方が好きですね。 後半に合唱部分があります。そもそもはコーラス部を僕1人で歌うつもりだったのですが、レコーディング当日の都留さんの発案でそれぞれの友人に参加して貰うこととなり、最終的にこのような形となりました。おかげでアルバムの終盤を締める特別な存在になったと思っています(参加してくれた皆さんには、この場を借りて改めて、お礼を言いたいと思います。本当にありがとう!)。 よかったら皆さんも聴くだけでなく、ぜひ一緒に口ずさんでみてください。
12. それから
製作:2004 /収録:2004
- つづきを読む
ひまわり3部作の第3部、「それから」です。「ひまわり3部作」とその目的については、「ひぐらし日記」の解説をご覧下さい。
時間軸的には、「ひぐらし日記」→「ひまわり」→「それから」となり、この物語の最後の語り手は、また「ひまわり」の女性へとバトンタッチします。
「ひぐらし日記」の直後が「ひまわり」ですので、この2曲間の時間は短いものですが、「ひまわり」と「それから」の間には、非常に長い隔たりが存在します。それだけこの物語の中で時間が経ったということを意味しますが、この間の出来事はどこにも書かれていません。これも今作(息吹)でのテーマのひとつで、この言わば「行間を埋める」作業を、聴く人に委ねたいということなのです。どうかご自分でこの物語を完成させてください。あるいは、あえて完成させないというのも、選択肢のひとつかもしれません。
この曲の完成を以って、まずはひとつ、ちいさな物語が存在することになりました。しかし、表現できた心情がいたって単一的で、構成も非常に単純、納得できる内容にはまだまだ十分ではない、と思えたのも事実です。 そして、その反省を元にもう一段階クオリティの高いものを目指し、「息吹」に取り組むこととなりました。
音楽的な話を書きます。
僕の曲は大抵はサビから出来ることが多いのですが、この曲は例外で、イントロ→A→B→サビ という、歌の流れどおりに出来ていきました。イントロのアコギのフレーズは、遥か昔、高校生の頃から持っていたフレーズで、「ついにこれをここで使うときが来たか・・」と感慨深かったのを覚えています。
あとはやはり、2コーラスのおわり「・・おなーじねー、この涙も」のところで一瞬ブレイクして、「ひぐらし日記」のメインモチーフを持ってきたのが正解でした。この演出で、その時(頃)〜現在へと回想が一気に押し寄せてくるような感覚が上手く表現できたのではないかと思います。更に言うと、(最近は誰も褒めてくれなくなりましたが)個人的にここのギターソロは情感があり出色の出来だと思っています。自己満足ですけど・・。
13. ねがい
製作:2004 /収録:2005
- つづきを読む
通いなれた道や見慣れた風景も、見方や感じ方が変化することによって、突然特別な意味を持ったものに思えることがあるものです。 「息吹4部作」の最終章「ねがい」は、「今を変える」ために最も大切なことは、「自分を変えない」ことであったという考えに至った主人公の、駅から家までの帰り道の様子を「凍えるような寒い夜に起きた流星群」という特別な情景の中において描きました。
思えばこの「また、明日を生きて行こう」 という一行の為に、息吹という作品を創ったのかもしれません。
あらためて、このCDを聴くことで「息吹」という物語に参加して頂けたことに最大の感謝を込め、お礼を言わせて頂きます。 そしてまた、次の作品で皆さんにお会いできることを楽しみにしています。本当にありがとうございました。 最後に、聴き手の皆さん1人1人の中でこの物語を完結して頂けることを願って。
了